8.病気宣告

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不安と怖さで一杯でその夜はあまり寝られなかった。まだあの病気とは言われたわけじゃない、何か別の病気かもしれない、と何度も自分に言い聞かせてどうにか気持ちを保っていた。

翌日、いつものように血液内科の先生方が朝の回診に回ってきた。
「なべさん…大変なことになりましたね…。非常に珍しい病気の可能性が高いんですよ。」昨日はいなかった主治医のM先生がそう話した。

あぁ、やっぱりそうなんだ。あの怖い病気が疑われてるんだ…。目の前が真っ暗になった。

M先生は「詳しく話しますね。」と言ってベッド脇で紙に書きながら時間をかけてその病気について説明してくださった。

慢性活動性EBウイルス感染症は9割の日本人が既にかかっているEBウイルスというウイルスが増殖してしまう病気だそうだ。病気の原因は不明で、病気にかかる日本人は1年で20人ほど、100万人に1人の確率だという。患者数が少なく、研究され始めてからまだ日が浅いため知名度が低く、発見されるのが遅れる傾向があるらしい。たまたま、M先生がこの病気の研究チームと繋がりがあり、早期に(それでも入院から2ヶ月経っていた)見つけてもらえた。

日本の人口って1億人超だよ?!1年でたった20人って…。しかもそんな確率、宝くじに高額当選するより低いじゃん…。これまで1度も当たったことないのに(泣)何だか空想の話を聞いているようだった。

症状は発熱、肝臓、脾臓の肥大、リンパ節の腫れ、貪食症候群、蚊過敏症など。病気が進行すると悪性リンパ腫、白血病、多臓器不全などを併発する致死率の高い病気らしい。

ただ、どういった症状が出るかには個人差があり、人によってはただの皮膚症状しか出ない場合もあるため、沢山の診療科をたらい回しにされた末に、診断が出た時にはもう手遅れというケースも少なくないという。

ここまで話を聞いて、
私「先生!まだ私はこの病気と決まったわけじゃないんですよね?!」
先生「まだわからないですね。ただ先日の検査で普通じゃ考えられない量のウイルスがいることがわかったんです。」

聞くとウイルスDNA定量と呼ばれるその検査は血中にどれくらいウイルスがいるか調べるものらしいが、健康な人のウイルス量が0~200程度なのに対し、なんと私は40万もの数だったそうだ。桁違いじゃないか…。

先生「一過性のウイルス感染を除き、この膨大な数のウイルスが出ているということは、やはりその病気の可能性が高いと思います。」この病気でないことに望みを少しでも持ちたかったが、頭から全否定された気分だった。先生は続けてこの後の治療の進め方について説明してくれた。

この病気はまだ研究段階にあるため、治療法が確立していないこと、今のところ有効とされている治療法は抗がん剤治療を受けた後、骨髄移植に進む方法であること、骨髄移植はリスクの高い治療法で将来妊娠できなくなることを聞いた。

私「妊娠できないんですか…。」その話は子どもを持つことがずっと夢だった私にとって、絶望でしかなかった。正直、この病気の話をされた時よりもショックが大きかった。
先生「まだ若いなべさんにこんな話をするのは心苦しいんですが。」
沈黙が流れた。

顔を上げた時、こちらの気持ちに寄り添ってくださる優しい先生の表情を見て、一瞬心のこわばりがほぐれて泣きそうになる。先生の顔を見ないようにした。

先生「私は30年ほど血液内科の医師をしていますが、この病気はとても珍しいために、今までお会いした患者さんは10人もいないんです。」
私「その患者さん達はどうなったんですか…?」
先生「亡くなった方もいますし、治療して元気にされている方もいます。」

早く退院したい、早く仕事復帰したいとばかり思っていたけれど、それどころではない生死に関わる深刻な状況にいるということを嫌でも理解せざるを得なかった。

先生が説明の時に書いてくださったもの

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